5.30.2020

第8話

2000年 8月31日
出発の日。
ヤッピとカワがわざわざ仕事を休んで空港へ送ってくれるって事で家に迎えに来てくれた。家を出るとき母親が見送った。車の中で「お母さん泣いてなかった?なんか気まずかった〜」と笑いまじりでヤッピが言った。まあ1年間帰らないつもりだしましてや海外だから母親というものはそういう感情になるのかもなぁと思った。
空港に着いてからの事はよく覚えてないけど、別れ際に、バンクーバーに遊びに来なよなんて言ったかもしれない。

あのときのタイジみたいに緊張するかと思っていたけど意外にリラックスしていた。



18時
緊張したのは飛行機だった。初めての海外、ましてや初めての飛行機だった。ちょうど主翼の見える座席でそれがバタバタ揺れるもんだから折れるんじゃないかとマジで不安だった。たまたま隣には日本人女性が座っていたから会話で気を紛らせる事ができた。その女性は確か31歳って言ってたと思うけど22歳のオレにとっては見た目がそれよりも随分歳上だなと思った。
やがて外は暗くなり主翼がみえなくなるといつの間にか不安もどこかへ消えていた。



現地時間9時
経由地のポートランドに到着すると日本人はオレとその女性くらいだった。とうとう外国の地に来たんだと。デルタ航空の乗務員はみんな外人だったし乗客も外人ばかりだったけどまだちらほら日本人がいた為か少し気持ちにゆとりがあった。空港の売店で飲み物を買ってその女性ともそこで別れ、いよいよ日本人はオレ1人になると緊張が押し寄せてきた。セスナ機への乗換えで外に出ると日本とは全く違い肌寒くさらに緊張を高めた。座席に着いて待っていると隣にさっきとは違う日本人女性が座った。眉毛の濃い子でその感じが中学の同じクラスにいた子にそっくりだった。
フライト中その子と会話をしているうちに緊張は解けていった。




この物語はフィクションです。登場する人物等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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